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かぶき町が夕闇に覆われ始めた頃、万事屋に届いた電報はエリザベスからのもので、その無駄に愛らしいデザインに嬉々として受け取った桂はしかしすぐさま深刻な表情になった。
「電話を借りる」
そう言った次の瞬間にはもうダイヤルを回しており、受話器に向かい何やら早口で話している。不穏な空気を感じた銀時が覗こうとするより早く、桂は電報を袂に仕舞ってしまった。
「出かけてくる。明日の朝には戻る」
電話を終えるなりそう言って、足早に玄関のほうへ向かう。
「ちょっ、」
待てと腕を掴もうとした手は虚しく宙を掻いた。
攘夷活動に口出しするつもりはないし、桂が強いこともよく知っている。だがすぐひとりで無茶することも知っている。いつもの桂ならともかく、今は身体が仔供返りしている身だ。どんな弊害があるか分からない。それを自身で認識していないあたりがまた危うい。
無茶しないように釘を刺すだけ、銀時はそう自分に言い訳をして万事屋を飛び出た。
飛び出たのはいいものの、どこを探してよいのかわからない。あてなどあるわけもなく、かぶき町をひたすら彷徨う。焦る心と裏腹に、夜がどんどん更けていく。
ふと紅桜の一件を思い出し、背筋が凍った。
くだらないことに巻き込むかと思えば、たった一人で全てを背負い込もうとする。何も話さずに万事屋を出て行った桂の後ろ姿が痛い。一言でも何か言ってくれれば絡みようもあっただろうに、初めから全くあてにされなかったという事実がやけに重く圧し掛かってきて、銀時は思わず頭を掻きむしった。
(クソ・・・あのバカ!!)
探しても探しても、その姿は見つからない。まるで悪夢の中に迷い込んでしまったような錯覚を覚えながら、それでも万事屋へ帰る気にはなれず、一晩中駆けずり回って気付くと東の空が白み始めていた。
朝には戻る、そういえばアイツはそう言って出て行ったんだった。もしかしたらもう帰っているかもしれない。
寝不足の朦朧とした頭でそう考え、ふらふらと万事屋の方角へ向き直ったそのとき、視界の隅に一人の少女を捉えた。
両手に大きなゴミ袋をひっさげてすたすたとゴミ置き場に現れ、ぼんと袋を投げ捨てる。まだ未成年だろうに、姿格好は水商売の娘のそれだ。そんなことはかぶき町では少しも珍しくないが、その姿はなぜか銀時の眼を強く惹きつけた。
薄ピンクのキャミソールワンピースを纏い、露わな白い肩はゴミ溜めの前で一際儚く見える。黒い髪を愛らしく纏め、うなじの後れ毛が愛らしく、大きな瞳に長い睫毛に、紅をさした口唇はぽってりと、・・・・・・て、アレ。
「・・・・・・・・・・・・ヅラ君。何やってんの」
「ヅラじゃない、桂だ」
続け。