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むらむらっともっさんを書きたくなったので、短いけど初坂桂。
「こりゃまた、随分と思い切ったイメチェンやのー」
サングラスを外して開口一番、その男は短髪の桂を前にからからと笑った。
「貴様、人の髪型を見て笑うとは何事だ」
「いや、かわええよ。気に入らんのならまた伸ばせばいいき」
何がそんなに楽しいのかと思うくらいの明るい口調で、坂本は桂をがばりと腕に収める。
「傷によう効く薬を持ってきたけの、風呂上りに塗るとええよ」
「・・・・・・さすが、耳が早いな」
紅桜の一件は、無論坂本の耳にも入っているだろう。一瞬しらを切ろうかとも思ったが、快援隊の情報網は宇宙規模だ。観念した桂は腕の中でそっとため息をついた。
「のうヅラ、湯治を兼ねて、しばらくワシんとこに来んか?勿論エリザベスも連れてきてえいぞ」
のんびりと髪を撫でながら、底抜けに明るい、そしてどこか慈しみを含んだ声で坂本が言う。
この男はいつもそうだ。傷に直接触れるようなことは何も言わず、痛みや悲しみごと全部包むような慰め方をする。
「党が大変なときだ。皆を放っておいて自分だけ休んでいるわけにはいかぬ」
「ほうか・・・。残念じゃの」
その頑なな答えを最初から予想していたのか、坂本はあっさりと折れた。労わるように髪を撫でていた手で桂の後頭部を包み、自分の肩口に寄せる。
「・・・のう、ヅラ?」
「ヅラじゃない」
「ワシぁ、おんしが泣くところはあまり見たくないんじゃが」
桂の身体をがっしりと抱き寄せて、坂本がゆっくりと呟く。
「泣きたいときには、泣いてほしいとも思っちょる」
「ああ、分かっている」
桂もまた、穏やかに応える。
「だが大丈夫だ、何も心配はいらん。高杉は俺が必ず止める。お前は安心して宇宙を航海しておれば良い」
そう言う声は、優しく力強い。自分が地上に捨て置いてきたものの重さと桂の背負うものの大きさを改めて思い、坂本は何も言わずにその小さな頭をゆっくりと撫でた。